お問い合わせ
AI開発

既製のAIツールと独自開発、どちらを選ぶか|判断の観点と組み合わせ方

既製AIツールと独自開発を、転記・権限・保守・費用から比較。営業の提案作成を例に、試用で測る項目、組み合わせ方、開発を見送る判断まで説明します。

この記事のポイント

  • 文章作成や要約など汎用的な作業なら、まず既製のAIツールで試すのが手軽。
  • 社内システムとの連携や業務固有の手順が必要なら、独自開発を検討する。
  • 手動の転記や確認に残る負担を測り、既製機能・運用変更・独自開発の順に解決策を比べる。

業務にAIを取り入れようとすると、多くの場合、二つの選択肢が出てきます。すでに提供されているAIツールを契約して使うか、自社の業務に合わせたAIアプリを開発するかです。

既製のツールはすぐに使い始められる一方で、自社の業務に合わない部分が残ることもあります。独自開発は業務に合わせて作れますが、費用と期間がかかるうえ、公開後の保守も必要です。どちらが良いかは、対象の業務や社内の体制によって異なるでしょう。

この記事では、既製のAIツールと独自開発を比べるときの観点と、判断を進める手順を説明します。

既製のAIツールと独自開発の違い

ここでいう既製のAIツールとは、事業者が多くの企業向けに提供しているAIのサービスのことです。たとえば、ChatGPTやClaudeのような対話型のAIサービスや、Microsoft 365 Copilotのように業務ソフトに組み込まれたAI機能が該当します。機能や料金は変わるため、導入時は公式情報を確認してください。

既製のAIツールと独自開発の二つが、どちらも下にある外部のAIモデルを使っている構成。独自開発の側には、業務に合わせた画面・手順と社内システム連携が上乗せされており、違いが出るのはこの作り込みの部分だと示している。
どちらも外部のAIモデルを使い、違いは画面や社内連携の作り込みにあります。

独自開発とは、自社の業務に合わせてAIを使うアプリを作ることです。AIのモデルそのものを一から作るわけではありません。外部の事業者が提供するAIのモデルを部品として使い、画面や処理の流れ、社内の資料やシステムとのつなぎ込みを自社向けに作るのが一般的な形です。

つまり、どちらを選んでも、AIのモデルは外部のものを使うことが多くなります。違いが出るのは、業務に合わせた画面や手順、社内システムとの連携をどこまで作り込めるかという点です。

既製のツールが向いている場合

既製のツールが向いているのは、文章の下書き、要約、翻訳、アイデア出しのように、多くの会社に共通する作業です。こうした作業は、利用者が自分で指示を工夫すれば、特別な仕組みがなくても進められます。

すぐに始めたい場合や、AIが自社の業務でどのくらい役に立つかを確かめたい段階でも、既製のツールは有力な選択肢でしょう。契約すれば使い始められるため、試すまでの準備が少なくて済みます。

ただし、社員が業務の情報を入力することになるため、入力してよい情報の範囲や利用のルールを先に決めておくことが前提です。社内ルールの作り方は、AIの社内利用ルールの作り方で説明しています。

独自開発が向いている場合

独自開発を検討したいのは、既製のツールでは業務の流れに合わない場合です。たとえば、社内の販売管理システムから案件の情報を取り出し、AIで説明文の下書きを作って書類に組み込むような処理は、既製のツールだけでは実現しにくいことがあります。

業務固有の手順を毎回同じ形で実行したい場合も、独自開発が候補になります。既製の対話型ツールでは、使う人によって指示の出し方が変わり、結果にばらつきが出がちです。専用のアプリなら、入力欄やひな形を固定して、誰が使っても同じ手順で処理できるようになります。

閲覧権限の管理や利用記録の保存について、自社の決まりに合わせた作りが必要な場合も、開発を検討する理由になるでしょう。

比べるときの観点

既製のツールと独自開発を比べるときの主な観点を、表にまとめました。ここに書いたのは一般的な傾向で、実際には製品や開発の内容によって変わります。

観点 既製のAIツール 独自開発
使い始めるまでの期間 短い傾向 設計と開発の期間が必要
初期の費用 抑えやすい 開発費がかかる
業務への合わせ込み 提供される機能の範囲内 必要に応じて作れる
社内システムとの連携 対応している範囲に限られる 要件に合わせて作れる
機能の変更 提供元の判断で変わる 自社の判断で変えられる
公開後の保守 主に提供元が行う 自社または開発会社が行う

費用を比べるときは、初期の費用だけでなく、利用期間全体で考えることが大切です。既製のツールは利用者の数に応じて費用が増える料金体系のものがあり、独自開発は保守運用の費用が継続してかかります。費用の考え方はAI導入の費用構成でも整理しています。

両方を組み合わせる考え方

既製のツールと独自開発は、どちらか一方を選ぶものとは限りません。日常の文章作成や要約には既製のツールを使い、社内システムと連携が必要な特定の業務だけを開発する、という組み合わせも一つの方法です。

社員がブラウザで使うAIの作業環境を社内に用意し、その中で業務ごとの機能を追加していく方法もあります。この形なら、複数のAIモデルを使い分けたり、利用者ごとに権限を設定したりしやすくなります。構成の考え方は社内AI基盤とはで整理しています。

判断を進める手順

迷ったときは、まず対象の業務を一つ選び、既製のツールで試してみる方法が手堅いでしょう。試す中で、うまくいった点と足りなかった点を記録しておいてください。

対象の業務を一つ選び、既製のツールで試し、足りない点を記録する流れ。社内連携などの不足が残れば独自開発を検討し、十分に業務が回るならルールと使い方の共有に力を注ぐ、という二つの分かれ道を示している。
既製のツールで試して足りない点を記録し、開発が必要かを判断します。

足りなかった点が「社内の資料を参照できない」「社内システムに結果を登録できない」「毎回同じ手順にならない」といった内容であれば、独自開発で解決できる可能性があります。記録した内容は、そのまま開発の要件を考える材料になります。

反対に、既製のツールで十分に業務が回るのであれば、無理に開発する必要はありません。利用のルールを整え、社内で使い方を共有することに力を注ぐほうが、費用に対する効果は大きくなるはずです。

営業の提案作成で比較する想定例

架空の企業が、打ち合わせメモから提案のたたき台を作りたいとします。担当者が案件ごとにメモを入力し、文章を確認して資料へ貼り付けるだけなら、既製ツールで試しやすい業務です。承認された情報だけを扱い、社外への送付は担当者が行う前提です。

使い始めてから「顧客管理システムから案件情報を毎回転記する」「価格表と提案文の内容を毎回照合する」という負担が残ったとします。ここで独自開発を判断する前に、どの負担が、どれくらいの頻度で発生するかを測ります。

残った作業 先に確認すること 検討する対応
毎回長い指示を書く 共通ひな形で減らせるか 既製ツールの使い方を統一
資料を毎回選ぶ 既製の参照機能で要件を満たすか 製品の機能と権限を確認
案件情報を転記する 既存システムから必要項目を渡せるか 連携部分の開発を検討
確認が担当者任せになる 承認者と記録を固定する必要があるか 専用の承認画面を検討

「指示の書き方がばらばら」という問題なら、専用アプリを作る前にひな形の共有で改善する可能性があります。反対に、役割ごとの閲覧制限や送付前の承認を確実に実施する必要があるなら、利用者の注意だけに頼る運用では足りない場合があります。

比較用の試用を進める手順

最初に、実際に使いたい文書を一種類選び、個人情報や非公開条件を除いた入力例を用意します。次に、既製ツールで下書きの作成から担当者の確認までを通して試します。AIが文章を出すまでの時間だけでなく、情報の準備と転記、修正に使った時間も記録します。

その結果を見て、文章の品質、情報の受け渡し、承認と記録の三つに課題を分けます。文章の品質に問題があるなら、独自開発しても同じモデルと資料で改善するとは限りません。情報の受け渡しが主な問題なら、AI部分を大きく変えずに連携機能を追加する案があります。

開発会社へ相談するときは、「専用AIを作りたい」だけでなく、この試用記録を渡します。解消したい手作業が分かれば、必要な開発だけに範囲を絞りやすくなります。

費用を同じ期間で比べる

仮に一年間の利用を検討するなら、既製ツールは契約費、初期設定、社員への説明、日常の手作業を合計します。独自開発は設計・開発費に加え、AIの利用料、クラウド費、保守費、資料管理や問い合わせ対応の工数を含めます。これは比較の項目例で、特定の製品の価格を示すものではありません。

利用人数や件数が増えた場合も考えます。利用者単位の料金と処理量に応じた料金では、増え方が異なります。逆に利用が伸びなかった場合、契約や運用をどこまで縮小できるかも比較してください。

また、独自開発をすればすべてを自由に変更できるとは限りません。ソースコードや設定を誰が管理するか、外部サービスの変更に誰が対応するかを確認します。製品名と費用だけでなく、運用を続けられる体制まで比べる必要があります。

今は開発しないと決める場合

処理の回数が少なく、現在の手作業で支障がないなら、試用したうえで開発を見送る判断も合理的です。元の業務手順が毎月大きく変わる場合も、先に運用を整理すると後の作り直しを減らせます。

見送る場合は、再検討する条件を残します。たとえば「転記作業が担当者一人で処理できなくなった」「部署限定の情報を扱う必要が出た」「承認の履歴が必要になった」といった業務上の変化です。導入の時期を曖昧に延ばすより、何が変わったら判断し直すかを決めておくと次の相談につながります。

まとめ

既製のAIツールは、汎用的な作業をすぐに始めたい場合に向いています。独自開発は、社内システムとの連携や業務固有の手順、権限や記録の管理が必要な場合に検討する選択肢です。両方を組み合わせる方法もあるため、まずは対象の業務を一つ選んで既製のツールで試し、足りない点を記録するところから始めてみてください。

e-Grantsでは、既製のツールで足りない部分について、課題の整理から設計・開発、公開後の保守運用まで対応しています。独自開発が必要かどうかの整理から相談したい方は、AIアプリケーション受託開発のページをご覧ください。

益田 尚紀

この記事を書いた人

益田 尚紀株式会社e-Grants 代表取締役

株式会社e-Grants代表取締役。愛知県一宮市を拠点に、企業のAI導入支援・AI受託開発・社内AI基盤の構築と、工務店のWeb集客支援に取り組んでいます。現場で使えるAI活用とデジタル集客を、むずかしい言葉をほどいて発信します。

お問い合わせ

AIの開発・導入のご相談から、工務店向け集客パッケージのお見積もりまで承ります。何から始めるか決まっていなくても大丈夫です。