
この記事のポイント
- 推進担当の仕事を、相談の受付、使い方の記録、ルールの見直し、効果の記録に分けて書き出す。
- 兼務の時間は仕事の一覧から見積もり、上長と合意して業務分担に書く。
- 業務を知っている社内の担当と、ツールや設計に詳しい外部の支援とで、受け持つ範囲を分ける。
AIツールを契約しても、社内で誰が使い方を広め、質問に答え、ルールを見直すのかが決まっていないと、使う人と使わない人の差が広がります。かといって、AIに詳しい社員がいない会社では、誰を担当にすればよいのか迷います。
この記事では、社内のAI推進担当を決めるときに、どんな仕事を任せるのか、どんな人が向いているのか、兼務の時間をどう決めるのか、外部の支援とどう分担するのかを説明します。結論は、推進担当の仕事を先に書き出し、その一覧をもとに時間と分担を決めることです。担当者の肩書きだけを決めて仕事の中身を決めないと、推進担当は本来の業務の合間に何をすればよいか分からなくなります。
推進 担当が 受け持つ 仕事
推進担当の仕事は、ツールの操作を教えることだけではありません。社内の相談を受け、うまくいった使い方を記録し、ルールを見直し、効果を記録する、という仕事が続きます。最初に、受け持つ仕事を書き出します。

| 仕事 | 内容 | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| 相談の受付 | 使い方やルールについての質問に答える | 随時 |
| 使い方の記録 | うまくいった指示文や手順を社内で共有する | 毎週 |
| ルールの見直し | 利用ルールで迷った例を集め、改定案を作る | 毎月 |
| 効果の記録 | 試している業務の作業時間や直した量をまとめる | 毎月 |
| 利用者の管理 | アカウントの発行と停止を、総務や情報システムと調整する | 入退社や異動のとき |
| 経営者への報告 | 使われている業務、課題、次に試す業務を報告する | 四半期ごと |
すべてを一人で行う必要はありません。アカウントの管理は総務、経営者への報告は上長と一緒に行う、という分け方もできます。書き出した一覧は、推進担当を決めたあとに業務分担表として残します。
社内に広げる手順そのものはAIを一部の社員から全社に広げる手順で説明しています。推進担当は、その手順を社内で進める役割を担います。
推進 担当に 向く人
推進担当に必要なのは、AIの専門知識よりも、社内の業務を知っていて、人に聞きに行けることです。どの部署でどんな作業に時間がかかっているかを知っている人は、AIを試す業務を選びやすくなります。
向いている人の条件として、次の三つを確かめます。一つ目は、複数の部署の業務を知っていることです。総務、営業事務、経営企画など、他部署とやりとりの多い職種の人が当てはまりやすくなります。二つ目は、質問されたときに分からないことを分からないと言い、調べてから答えられることです。三つ目は、試した結果を記録に残す習慣があることです。
AIを個人的によく使っている社員が、推進担当に向くとは限りません。自分の使い方には詳しくても、他の社員の業務に合わせて説明することが得意とは限らないためです。その社員には、推進担当を支える相談役として加わってもらう方法もあります。
兼務の 時間の 決め方
推進担当を専任で置けない会社では、他の業務との兼務になります。兼務で失敗しやすいのは、時間を決めずに任せることです。本来の業務が忙しくなると推進の仕事が後回しになり、相談への返事が遅れ、使う人が減ります。
時間は、次の手順で決めます。
- 前の表の仕事ごとに、一回にかかる時間を推進担当と見積もる。
- 頻度を掛けて、週あたりや月あたりの時間を出す。
- 本来の業務のうち、減らす作業や他の人に移す作業を上長と決める。
- 決めた時間と減らした作業を、業務分担表に書く。
- 最初の試験期間が終わったら、実際にかかった時間と比べて見直す。
見積もりを記録する表の例は次のとおりです。時間の欄は、推進担当と上長が話し合って埋めます。
| 仕事 | 一回の時間 | 頻度 | 月あたりの時間 | 減らす本来の業務 |
|---|---|---|---|---|
| 相談の受付 | (記入) | 随時 | (記入) | (記入) |
| 使い方の記録 | (記入) | 毎週 | (記入) | (記入) |
| ルールの見直し | (記入) | 毎月 | (記入) | (記入) |
| 効果の記録 | (記入) | 毎月 | (記入) | (記入) |
試し始めの時期は相談が多く、使い方が定着すると相談は減ります。最初の時間をそのまま続けず、見直しの時期をあらかじめ決めておきます。
上長と 決めておくこと
時間のほかに、推進担当がどこまで自分で決めてよいかを上長と決めます。決めておく項目は、決裁の範囲、評価、優先順位の三つです。
決裁の範囲は、推進担当が自分で決めてよいことと、上長や経営者の承認が要ることの区別です。社内向けの使い方の手引きを更新することは推進担当が決め、利用ルールの改定や新しいツールの契約は承認を得る、という分け方が考えられます。
評価は、推進の仕事を人事評価でどう扱うかです。兼務の仕事が評価に入らないと、本来の業務を優先する理由ができてしまいます。優先順位は、本来の業務と推進の仕事が重なったときにどちらを先にするかの目安です。
社内の 相談 窓口の 作り方
推進担当を決めたら、社員がどこに相談すればよいかを決めます。窓口が決まっていないと、質問が個人宛てのメールや立ち話に分散し、同じ質問に何度も答えることになります。
窓口は、社内チャットのチャンネルや相談用のフォームなど、一つの場所にまとめます。質問と回答をその場所に残すと、他の社員も過去の回答を読めます。よく出る質問は、月に一度まとめて社内の手引きに加えます。
相談窓口とは別に、AIに入力してはいけない情報を誤って入力したときの連絡先も決めます。誤入力の連絡は、推進担当だけでなく、情報管理の責任者にも届くようにします。初動の考え方は生成AIの社内利用ルールの作り方の報告手順の項目を参考にしてください。
外部 支援との 分担
推進担当がすべての仕事を社内でこなす必要はありません。業務の知識が必要な仕事は社内で、ツールの比較や設計など専門の知識が必要な仕事は外部の支援を受ける、という分担が考えられます。

| 仕事 | 社内の推進担当 | 外部の支援 |
|---|---|---|
| 目的と試す業務を決める | 社内の課題を集め、候補を出す | 候補を比べる観点を示す |
| 業務の棚卸し | 担当者に聞き取る | 聞き取りの項目と整理の方法を用意する |
| ツールの選定 | 使う場面と条件をまとめる | 候補のツールを比べ、契約の確認点を示す |
| 利用ルール | 社内で迷う場面を集める | ルールのひな形と書き方を示す |
| 社員への研修 | 自社の業務の例を用意する | 研修の構成と演習を作る |
| 日々の相談 | 一次の窓口として答える | 答えにくい質問に回答する |
| 効果の振り返り | 記録を集める | 記録の見方と次の計画を一緒に考える |
外部に頼む範囲は、試験導入の時期と定着の時期で変わります。最初は外部の支援を多めに受け、推進担当が慣れてきたら社内で受け持つ範囲を広げます。外部の相談先を選ぶときの確認点はAI導入の相談先・外注先の選び方で説明しています。
推進 担当を 一人にしない
推進担当を一人だけにすると、その人が休んだり異動したりしたときに推進が止まります。各部署に一人ずつ協力者を置き、推進担当と協力者で相談を分けて受けると、一人に負担が集中しません。協力者は、自分の部署の業務でAIを試し、結果を推進担当に伝える役割を持ちます。
推進担当の仕事も、相談の記録や手引きとして残します。担当が替わるときに、新しい担当者は過去の相談と回答を読めば、社内でどんな質問が多いかを把握できます。
まとめ
社内のAI推進担当を決めるときは、相談の受付、使い方の記録、ルールの見直し、効果の記録などの仕事を先に書き出します。兼務の時間は仕事の一覧から見積もり、減らす本来の業務と一緒に上長と合意して記録します。業務の知識が必要な仕事は社内で、ツールの比較や設計など専門の知識が必要な仕事は外部の支援で分担し、推進担当を一人にしない体制を作ってください。
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