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AIを一部の社員から全社に広げる手順:試験導入の後に進めること

AIの試験導入後に社内へ広げる手順を解説。営業から総務へ展開する想定例、一業務一枚の手順書、利用開始・異動・退職時の管理、広げる前の確認条件を紹介します。

この記事のポイント

  • 全社に広げる前に、うまくいった使い方を標準の手順と指示文の見本にまとめる。
  • 業務が近い部署から段階的に広げ、部署ごとに相談役を置く。
  • 新しい部署では資料と確認項目を見直し、少人数で再確認してから利用者を増やす。

試験導入では効果が出た。一部の社員は、毎日のようにAIを使っている。それなのに、ほかの部署にはなかなか広がらない。AI導入を進める中で、こうした段階に差しかかる会社は少なくないでしょう。

一部の社員が使えている状態から全社で使われる状態に進むには、試験導入とは別の準備が必要です。使い方を人に頼った状態のまま利用者を増やすと、使い方がばらばらになったり、情報の扱いが管理できなくなったりするおそれがあります。

この記事では、AIを一部の社員から全社に広げるための手順を、段階に分けて紹介します。試験導入の進め方については、AI導入は小さく試す:試験導入で確認することを参考にしてください。

広げる前に、今の状態を確認する

全社に広げる前に、一部の社員がどのようにAIを使っているかを確認します。どの業務で、どのツールを、どのような指示で使っているか。その結果、作業時間や品質がどう変わったか。こうした点を、実際に使っている社員から聞き取ってください。

聞き取りでは、うまくいった使い方だけでなく、うまくいかなかった使い方も集めておくのがおすすめです。AIの出力を大きく直す必要があった作業や、使うのをやめた業務も、ほかの部署に広げるときの判断材料になります。

この段階で、効果がはっきりしない場合は、全社に広げるのを急がないほうがよいでしょう。対象の業務や使い方を見直してから広げるほうが、結果として進めやすくなります。

手順1:使い方を標準の手順にまとめる

最初の手順は、うまくいった使い方を、ほかの社員でも再現できる形にまとめることです。一部の社員が使えているのは、その人が工夫を重ねてきたからかもしれません。その工夫を言葉にしておかないと、ほかの社員は同じ結果を得られないでしょう。

うまく使えている社員の工夫を、対象の業務、使うツール、指示文の見本、出力の確認方法の4項目を書いた一枚の標準の手順にまとめ、共有フォルダに置いてほかの社員が誰でも見られるようにする流れを示している。
うまくいった使い方を4項目の標準の手順にまとめ、誰でも再現できるようにします。

まとめる内容は、対象の業務、使うツール、指示文の見本、出力の確認方法の4つが基本です。指示文の見本は、コピーして使える形で用意しておくと、使い方に慣れていない人でも試しやすくなります。生成AIへの指示文はプロンプトと呼ばれ、書き方によって出力の質が変わります。

資料は、細かく書きすぎないことも大切です。一つの業務につき一枚程度にまとめ、社内の共有フォルダなどで誰でも見られるようにしておきます。

手順2:業務が近い部署から段階的に広げる

標準の手順ができたら、利用者を広げていきます。いきなり全社に広げるのではなく、試験導入を行った部署と業務が近い部署から始めるのが進めやすい方法です。同じような作業がある部署なら、まとめた手順をそのまま使える部分が多いためです。

試験導入を行った部署から、業務が近い部署へ、さらに全社へと段階的に広がる様子を示し、各部署に相談役を一人置くことと、使った結果や困った点をもとに標準の手順を直す戻りの矢印を描いている。
業務が近い部署から順に広げ、部署ごとの結果で標準の手順を直していきます。

広げる部署ごとに、相談役を一人決めておくとよいでしょう。相談役は、AIに詳しい人である必要はありません。部署の業務を理解していて、困ったときに最初に相談を受けられる人が向いています。試験導入に参加した社員が、ほかの部署の相談役を手伝う形もよいでしょう。

部署を広げるたびに、使った結果や困った点を聞き取り、標準の手順を直していきます。部署によって業務が違えば、新しい使い方が見つかることもあるはずです。

手順3:ルール、アカウント、費用の管理を整える

利用者が増える前に、管理の方法を整えておくことも欠かせません。少人数のうちは目が届いていたことも、人数が増えると把握しにくくなるためです。

まず、社内の利用ルールを確認します。使ってよいツール、入力してよい情報、出力の確認方法が決まっているかを見直し、全社向けに分かりやすく書き直しておきましょう。

次に、アカウントの管理方法を決めます。社員が個人のアカウントで使っている場合は、会社として契約したアカウントへの切り替えを検討してください。会社が管理するアカウントであれば、入社や退職に合わせた追加や停止、利用状況の確認がしやすくなります。

費用の管理も見直しておきたい点です。利用者ごとに料金がかかるツールでは、使われていないアカウントの費用が無駄になります。使った量に応じて料金が変わるツールでは、利用が増えるにつれて費用も増えていくでしょう。部署ごとの利用状況を定期的に確認できるようにしておくと安心です。ツールの機能や料金は変わるため、導入時は公式情報を確認してください。

手順4:全社に展開し、使い方を伝える

管理の方法が整ったら、全社に展開します。展開するときは、社員向けに使い方を説明する場を設けるとよいでしょう。説明会では、ツールの操作だけでなく、なぜAIを使うのか、どの業務で使えるのか、入力してよい情報は何かを伝えます。

説明会の後も、困ったときに相談できる窓口を用意しておくことが大切です。部署ごとの相談役に加えて、全社の推進役が質問を受け付ける形にすると、相談先に迷わずに済みます。

経営者や管理職が自らAIを使い、その様子を社内で共有することも、全社に広げる後押しになります。上の立場の人が使っていると、社員は業務でAIを使ってよいのだと受け取りやすくなるからです。

広げた後に続けること

全社に展開した後も、使われ方の確認と改善は続きます。部署ごとの利用状況を見て、使われていない部署があれば、理由を聞き取ってみてください。用途が見つかっていないのか、使い方が分からないのか、不安があるのかによって、必要な対策は変わってくるはずです。

うまくいった使い方を共有する場を定期的に設けると、新しい使い方が社内に広がりやすくなります。社内で使われない理由と対策については、ChatGPTを導入したのに社内で使われない理由と対策も参考にしてください。

営業部門から総務部門へ広げる想定例

営業でメールの下書きが使えるようになり、総務でも社内通知に使いたいと考えたケースを想定します。文章の下書きという点は共通していますが、営業の指示文をそのまま配るだけでは十分ではありません。総務では、対象者の範囲や社内規程との一致など、別の確認が必要になります。

まず、総務担当が普段作っている通知を一件選び、公開できる架空の内容に置き換えて試します。営業で使った「相手に提案する」指示が残っていれば、通知に不要な勧誘表現が入るかもしれません。用途に合わない条件を外し、日時、対象者、必要な行動、問い合わせ先を確認項目にします。

次に、初めて使う担当者が手順だけで一件を仕上げられるか確認します。試験導入に参加した社員が横で毎回説明しなければ使えないなら、まだ手順の補足が必要です。この段階で迷った操作や判断を記録し、総務向けの手順に反映します。

一業務一枚の手順書に書く内容

手順書は、操作説明だけでなく、使い始める条件と使い終わる条件まで含めると役立ちます。社内通知の下書きなら、次のような構成にできます。

欄 記入例
対象の作業 承認済みの条件を使う社内通知の下書き
入力する情報 日時、場所、対象者、依頼する行動
入力しない情報 個別の人事情報など、許可されていない内容
操作手順 見本をコピーし、指定の欄を書き換える
確認項目 日時、対象範囲、必須事項、未確定事項
完了条件 担当者が確認し、通常の承認を受ける
困ったとき 部署の相談役に連絡し、従来の方法へ戻す

この表に指示文、入力例、完成例を添えれば、使い方を説明しやすくなります。変更した際は更新日と担当者を記載し、古い手順へのリンクを新しい版へ差し替えます。複数の共有フォルダに同じ手順書を置くより、正式な手順書の置き場所を一つに決めるほうが更新漏れを減らせます。

利用者が増えたときの管理を点検する

新しい社員が使うときは、アカウントを発行するだけでなく、入力ルールと出力の確認方法を伝えます。部署異動では、参照できる資料や所属グループが前の部署のまま残っていないかを確認します。退職時には、通常の退職手続きと合わせて利用停止と共有物の引き継ぎを進めます。

管理担当が一人の場合は、不在時の対応者も決めておきます。利用停止や誤入力の報告が担当者の出社まで止まらないよう、連絡先と必要な情報を共有してください。相談対応にかかった時間も記録し、利用者の増加に対して支援体制が足りているか見ます。

全社に広げるかどうかは、契約席数だけで判断しません。新しい利用者が手順で作業できる、出力の確認者がいる、問い合わせを処理できる、利用料と管理負担を把握できる、という条件がそろう範囲で広げます。部署ごとの使い方を集める際は、社員向けのAI研修で紹介する演習も活用できます。

まとめ

AIを一部の社員から全社に広げるには、まず今の使い方を確認し、うまくいった使い方を標準の手順と指示文の見本にまとめます。そのうえで業務が近い部署から段階的に広げ、利用者が増える前にルール、アカウント、費用の管理を整えてから全社に展開するという流れです。展開した後も、使われ方の確認と改善を続けていきましょう。

e-Grantsは、愛知県一宮市のAIカンパニーです。名古屋・愛知の企業に向けて、小さく試す試験導入から社内ルールづくり、定着の支援までを行うAI導入コンサルティングを提供しています。社内への広げ方を相談したい場合は、30分の無料AI活用診断をご利用ください。

益田 尚紀

この記事を書いた人

益田 尚紀株式会社e-Grants 代表取締役

株式会社e-Grants代表取締役。愛知県一宮市を拠点に、企業のAI導入支援・AI受託開発・社内AI基盤の構築と、工務店のWeb集客支援に取り組んでいます。現場で使えるAI活用とデジタル集客を、むずかしい言葉をほどいて発信します。

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