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複数のAIモデルを使い分けて利用費用を管理する方法|中小企業向けの考え方

複数のAIモデルの費用を管理する方法を解説。仮定の利用回数による試算、再試行や外部処理を含む一件単価、通知と利用停止の違い、モデルを切り替える条件を紹介します。

この記事のポイント

  • AIモデルは品質と費用が異なるため、業務の難しさに合わせて使い分ける。
  • 部署や用途ごとに利用量を見えるようにし、上限と通知を設定する。
  • 一件の業務に含まれる再試行と外部処理まで集計し、予算通知と実際に処理を止める仕組みを区別する。

社内でAIを使う人が増えると、どのAIモデルを使うか、費用をどう管理するかが課題になります。AIモデルとは文章の作成や要約などを行うAIの本体のことで、LLM(大規模言語モデル)と呼ばれるものが中心です。提供する会社やモデルの種類によって、得意な作業や処理の速さ、費用が異なります。

すべての業務で最も高性能なモデルを使えば、費用は大きくなりがちです。反対に、安いモデルだけを使うと、難しい業務で十分な品質が得られないことがあります。この記事で説明するのは、複数のAIモデルを業務に合わせて使い分ける考え方と、利用費用を見えるようにして管理する方法です。

AIモデルによって何が違うのか

AIモデルを比べるときは、主に4つの点を見ます。回答や文章の品質と処理の速さ、一度に扱える文章の量、そして利用料金です。一般に、高性能なモデルほど料金が高く、処理に時間がかかる場合があります。

料金の仕組みは、サービスや契約の形によってさまざまです。利用者ごとの月額料金の場合もあれば、処理した文章の量に応じて料金がかかる従量課金の場合もあります。従量課金では、AIが文章を処理するときの単位である「トークン」の数で料金を計算する方式が一般的です。モデルの料金や仕様は変わるため、導入時は各社の公式情報を確認してください。

もう一つ確認したいのが、入力したデータの扱いです。入力した内容をAIの学習に使うかどうかや保存する場所は、サービスや契約によって異なります。社内の情報を扱う場合は、料金と合わせて利用規約やデータの取り扱いの条件を確かめましょう。

業務の難しさに合わせて使い分ける

使い分けの基本は、業務の難しさと求める品質に合わせてモデルを選ぶことです。たとえば次のような分け方が考えられます。

業務の例 求める性能 選び方の目安
誤字の確認、短い要約、分類 速さと低い費用 軽量で安価なモデル
メールや社内文書の下書き 標準的な文章の品質 中程度のモデル
契約書の確認補助、複雑な分析、企画書の構成 高い読解力と推論の力 高性能なモデル
長い資料をまとめて読み込む作業 一度に扱える量の多さ 扱える量の多いモデル

この分け方は一例で、実際の品質は業務ごとに試して確かめる必要があります。同じ業務でも、指示の書き方や参照させる資料によって結果が変わるためです。候補のモデルで同じ課題を処理させ、担当者が結果を比べる方法が確実でしょう。モデル選びの詳しい考え方はLLMのモデルの選び方でも扱っています。

使い分けを社員一人ひとりの判断に任せると、選ぶ手間がかかります。結果として、高性能なモデルばかりが使われることもあるでしょう。社内のAIワークスペースで、業務ごとに使うモデルを初期設定しておくと、社員が迷わずに使えます。

費用が増えやすい場面を知っておく

従量課金のAIでは、使い方によって費用が想定より増えることがあります。費用が増えやすいのは、たとえば次のような場面です。

長い資料を毎回まるごと読み込ませる使い方では、処理する文章の量が多くなります。必要な部分だけを検索して渡す仕組みにすると、処理量を抑えられます。また、うまくいかない回答を何度もやり直すと、その分の費用が発生する点にも注意が必要です。よく使う業務は、指示文の例を用意しておくとやり直しを減らせるでしょう。

注意したいのが、AIに作業を自動で繰り返させる仕組みです。設定の誤りで処理が止まらなくなると、短い時間で費用が大きく増えるおそれがあります。自動化の仕組みには、1回の処理で使える量や1日の上限を設定しておくと安心です。

利用量を見えるようにする仕組み

費用を管理するには、まず誰がどれだけ使っているかを把握する必要があります。部署ごと、利用者ごと、用途ごとに利用量と費用を集計できるようにしておきましょう。月の途中でも確認できる画面があると、増え方の変化に早く気づけます。

部署・利用者・用途ごとに利用量と費用を集計し、月の予算に対して一定の水準を超えたら管理者へ通知し、上限に達したときは利用を止めるか安価なモデルに切り替えるかを選ぶ流れを示している。
利用量を部署や用途ごとに集計し、予算の上限と通知、上限時の扱いを決めます。

次に必要なのが、予算の上限と通知の設定です。部署ごとに月の予算を決め、一定の水準を超えたら管理者に通知が届くようにする方法が考えられます。上限に達したら利用を止めるのか、安価なモデルに切り替えるのかも決めておくとよいでしょう。

集計した結果は、費用を減らすためだけに使うものではありません。よく使われている業務が分かれば、指示文の例や参照資料を充実させる候補が見えてきます。費用に対して効果が見合っているかを考える材料にもなります。効果の測り方はAI導入の効果を測る方法も参考にしてください。

特定のモデルに縛られない構成にする

AIモデルは新しいものが次々に公開され、料金や性能も変わります。特定の会社のモデルだけを前提に仕組みを作ると、より適したモデルが出たときに切り替えにくくなります。

社内のAIワークスペースや業務アプリを作るときは、複数のモデルを切り替えて使える構成にしておくと安心です。業務ごとに使うモデルを設定で変えられれば、品質や費用を比べながら見直せます。あるサービスで障害が起きたときに、別のモデルで業務を続けられる点も利点です。

ただし、モデルを切り替えると回答の傾向が変わることがあります。切り替える前には、よく使う業務で結果を比べ、問題がないかを確認しましょう。指示文の例や社内ルールも、新しいモデルに合わせて見直しが必要になる場合があります。

一件の業務に含まれる呼び出しを数える

問い合わせを分類して回答案を作るアプリでは、一件の受付でもAIを複数回呼ぶことがあります。分類、資料の検索、回答案の作成、結果の確認を別々に行う構成なら、利用者が見ている一回の操作と、課金対象の処理回数は一致しません。

利用者の一回の操作の裏で、分類、資料の検索、回答案の作成、結果の確認が別々に実行され、それぞれに課金対象の処理を示す印が付く様子を示している。回答案の作成には作り直しで再実行される戻りの矢印がある。
一回の操作でもAIを複数回呼ぶため、処理ごとに回数を数えて費用を見積もります。

架空の運用例として、月に1,000件を処理し、一件あたり通常は分類一回と回答作成一回を実行するとします。さらに、そのうち100件で回答を一回作り直すなら、分類は1,000回、回答作成は1,100回です。以下の単価は計算説明用の仮定で、特定のモデルの料金ではありません。

処理 仮の一回単価 回数 月の計算額
分類 0.5円 1,000回 500円
回答案の作成 3円 1,100回 3,300円
合計 個別に計算 2,100回 3,800円

この例では、AI呼び出し費用だけなら受付一件あたり3.8円です。資料の保管、検索、通信、アプリの運用、人による確認の費用は含んでいません。実際の見積もりでは、どの費用を含めた数字かを明記してください。

従量課金を回数単価へ置き換えて試算する場合は、代表的な入力と出力の量を測って仮単価を作ります。短い質問だけで試算すると、長い資料を読む処理で予算を超える可能性があります。通常の量と、多い場合の量を分けて計算すると、利用が偏った場合も把握できます。

安いモデルへ切り替える前に、やり直しを含めて比べる

一回の料金が下がっても、担当者が何度も回答を作り直すなら、一件を完了する費用は下がらないかもしれません。候補モデルを比べる際は、同じ業務例について、最初の出力、再試行の回数、人が修正した時間を記録します。

分類に迷った問い合わせだけ別のモデルへ回す方法もあります。ただし、切り替え条件をAI自身の「自信があります」という表現だけに頼るのは避けましょう。必須項目の不足、決めた分類に当てはまらない入力、出力形式の不一致など、確認できる条件を使い、誤った振り分けがないかを評価します。

モデルを使い分ける処理にも、開発と保守の手間がかかります。少量の利用では、複雑な振り分けを作るより、一つのモデルで対象を絞って運用するほうが管理しやすい場合もあります。利用料の差と、構成を増やす費用を合わせて検討してください。

予算の通知と、処理を止める仕組みを分ける

予算に近づいたときの通知は、管理者が気づくためのものです。通知が届くことと、上限で必ず利用が止まることは同じではありません。提供元の管理画面でどこまで制御できるかを確認し、必要に応じてアプリ側でも制限します。

一回の業務で再試行できる回数、同時に動かす処理数、受け付ける入力の量を決めておきます。請求額の反映に遅れがある場合や、複数処理が同時に進む場合もあるため、表示上の残額だけで厳密な停止を実現できるとは限りません。上限の扱いと停止時の動作を、検証環境で確認してください。

停止した利用者には、「処理を受け付けていない」のか「受け付けたが途中で止まった」のかを伝えます。途中で止まった処理を再開するときは、同じ出力の二重作成や外部への二重送信を避ける必要があります。コスト制御と、業務の結果を一緒に設計します。

月次の振り返りは増えた用途から確認する

合計額が増えたら、利用者数、受付件数、一件あたりの入力量、再試行率を分けて見ます。利用が定着して件数が増えたのか、不具合で同じ処理を繰り返しているのかでは、取る対応が変わります。費用の理由を調べるために、問い合わせ本文や個人情報をそのまま集計表へ保存する必要はありません。

用途と処理の識別子、モデル、利用量、成否を残し、費用の変化を追えるようにします。別のモデルへ切り替える場合は、品質に加え、その提供元へ同じ資料を渡してよいかも確認します。代替モデルを用意していても、データの利用条件が合わなければ自動で切り替えず、人の作業へ戻す方法を決めておきましょう。

まとめ

AIモデルは、品質や速さ、料金がモデルごとにさまざまです。業務の難しさに合わせてモデルを使い分け、社員が迷わないように初期設定を用意しておくと、品質と費用の釣り合いを取りやすくなります。利用量を部署や用途ごとに見えるようにし、上限と通知を設定しておくことも欠かせません。特定のモデルに縛られない構成にしておけば、料金や性能の変化にも合わせられます。

e-Grantsでは、複数のAIモデルの使い分けと費用管理を含めた、AIを使える社内インフラの構築を支援しています。特定のベンダーに縛られない構成も検討できますので、詳しくはAIを使える社内インフラの構築をご覧ください。

益田 尚紀

この記事を書いた人

益田 尚紀株式会社e-Grants 代表取締役

株式会社e-Grants代表取締役。愛知県一宮市を拠点に、企業のAI導入支援・AI受託開発・社内AI基盤の構築と、工務店のWeb集客支援に取り組んでいます。現場で使えるAI活用とデジタル集客を、むずかしい言葉をほどいて発信します。

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