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製造業の事務・営業部門から始めるAI活用:生成AIで減らせる作業と注意点

製造業の事務・営業向けに、受発注メール、見積説明、問い合わせのAI活用を解説。品番・数量・納期を扱う想定例、誤読を防ぐ照合表、担当者が承認してから使う試行手順を紹介します。

この記事のポイント

  • 製造業のAI活用は、生産設備を変えずに試せる事務・営業部門から始めやすい。
  • 見積の説明文、問い合わせの回答案、社内の資料探しは生成AIで手間を減らしやすい。
  • 品番・数量・納期は原文と照合し、未確定の条件をAIが補っていないか確認する。

愛知県には、ものづくりに関わる企業が多くあります。製造業の会社でAIというと、検査の自動化や生産計画の最適化を思い浮かべる方も多いかもしれません。

ただ、生産現場にAIを導入するには、設備との連携や品質への影響の確認など、検討することが多くなります。最初の取り組みとしては、ハードルが高いと感じる会社もあるでしょう。

そこでこの記事では、製造業の事務部門と営業部門から生成AIを使い始める方法を紹介します。生産設備を変えずに試せるため、小さく始めて効果を確かめやすいのが特徴です。あわせて、製造業ならではの情報の扱いに関する注意点も説明します。

事務・営業部門から始める理由

製造業の事務部門や営業部門には、文章を読む、書く、整理するといった作業が多くあります。受発注の書類、取引先とのメール、見積書に添える説明文、社内の報告書などです。生成AIが扱いやすいのは、まさにこうした作業です。

製造業の会社を生産ライン・設備と事務・営業部門に分け、生産ラインや設備には手を加えずに、事務・営業部門の受発注の書類、取引先とのメール、見積書の説明文といった文章の作業から生成AIを試す様子を示している。
生産設備に手を加えず、文章の作業が多い事務・営業部門から試せます。

事務・営業部門から始める利点は、生産ラインや設備に手を加えずに試せることにあります。AIの出力に誤りがあっても、人が確認する段階で直せるため、製品の品質に直接影響しにくい点も安心材料になるでしょう。

事務・営業部門で効果が確認できれば、社内でAIを使うことへの理解も得やすくなります。生産現場での活用を検討するのは、その後でも遅くはありません。

受発注と書類作成での使い方

事務部門では、取引先とのやりとりや書類の作成に多くの時間が使われています。こうした作業の下書きづくりは、生成AIを使いやすい分野です。

たとえば、納期の調整や仕様の確認に関するメールは、伝えたい要点を入力すれば、生成AIが丁寧な文面の下書きを作ります。担当者は内容を確認し、必要な部分を直して送れば済みます。言い回しに悩む時間が減るため、件数が多い部署ほど違いを感じやすいはずです。

社内向けの文書にも使えます。作業手順の変更を伝える通知や、会議の議事録、月次の報告書などです。会議のメモから、決まったことと次にやることを整理した議事録の下書きを作る、といった使い方ができます。

受発注のデータそのものを扱う作業は、既存の業務システムとの関係を考える必要があります。生成AIで書類の文面を整えることはできても、数量や金額の入力をAIに任せる場合は、誤りを防ぐ仕組みを慎重に検討してください。

営業部門での使い方:見積、提案、問い合わせ対応

営業部門では、見積書に添える説明文や提案書の作成に生成AIを使えます。製品の特徴や取引先の要望を入力して、説明文や提案書の構成案を作る、といった使い方です。

取引先からの技術的な問い合わせに対し、過去の回答例と製品の仕様書をもとにAIが回答案を作り、技術担当者が確認してから返信する流れを左から右へ示している。
問い合わせの回答案はAIが資料から作り、技術担当者が確認してから返信します。

取引先からの技術的な問い合わせに対して、回答案を作る使い方もあります。過去の回答例や製品の仕様書をもとに回答案を作り、技術担当者が確認してから返信する形です。営業担当者が技術部門に確認する回数を減らせる場合もあるでしょう。

海外の取引先とやりとりがある場合は、メールの翻訳や、英文の下書きづくりにも使えます。ただし、仕様や数値、契約に関わる内容は、翻訳の誤りが大きな問題につながるおそれがあります。重要な文書は、必ず内容の分かる人が確認するようにしましょう。

生成AIは、もっともらしいが事実と異なる内容を出力することがあります。製品の仕様や数値が含まれる文章は、元の資料と照らし合わせて確認する手順を決めておくことが大切です。

社内の資料や過去の記録を探す

製造業の会社には、製品の仕様書、作業手順書、過去の不具合の記録、取引先ごとの対応履歴など、多くの資料が蓄積されています。必要な情報を探すのに時間がかかったり、詳しい社員に聞かないと分からなかったりすることもあるでしょう。

こうした資料の検索にも、生成AIを使った仕組みが役立ちます。社内の資料を検索してから回答を作る仕組みは、RAGと呼ばれるものです。「この製品の過去の問い合わせ対応を知りたい」といった質問に、社内の資料をもとに答えられるようになれば、資料を探す時間を短くできます。

ただし、社内の資料とつなぐ仕組みは、既製のツールだけでは作れない場合があります。どの資料を対象にするか、誰がどの資料を見られるようにするかといった設計も必要です。まずは既製のツールで試せる作業から始め、効果を確かめてから検討するのが現実的でしょう。

製造業で注意したい情報の扱い

製造業でAIを使うときに特に注意したいのが、図面や技術資料、取引先から預かった情報の扱いです。取引先との契約で、情報の扱いが決められている場合があります。こうした情報を外部のAIサービスに入力してよいかどうかは、契約の内容を確認してから判断してください。

自社の技術情報やノウハウも、慎重に扱いたい情報です。入力した内容がAIの学習に使われるかどうかや、保存される期間は、ツールや契約の種類によって異なります。機能や条件は変わるため、導入時は公式情報を確認しましょう。

社内では、入力してよい情報と入力しない情報を具体的な例で決めておきます。「公開済みのカタログの内容は入力してよい」「図面と取引先名は入力しない」のように書くと、社員が迷わずに判断できるはずです。情報の分け方は、社内の情報をAIに入力する前に確認することで詳しく紹介しています。契約や法律に関わる判断が必要な場合は、専門家に確認すると安心です。

想定例として、納期確認メールの下書きを作る

部品メーカーの営業担当が、取引先から届く納期確認への返信を作るケースを考えます。以下の品番や数量は説明用の架空データです。入力が認められた環境で、「品番AB-120、数量200個、希望納期10月20日、回答期限10月8日」という依頼を受けたとします。

この時点で確定しているのは、取引先の希望と回答期限だけです。製造可能日や出荷日はまだ決まっていません。AIに「丁寧に返信して」とだけ頼むと、希望納期を確約するような文章になる可能性があります。そこで、次のように条件を分けて指示します。

納期確認メールの下書きを作成してください。受領した条件は品番AB-120、数量200個、希望納期10月20日です。生産部門に確認中で、回答は10月8日までに行う予定です。納品日は未確定のため約束せず、依頼を受け付けたことと回答予定だけを伝えてください。

担当者は出力を確認し、品番、数量、希望納期、回答期限を元の依頼と照合します。文章の丁寧さだけを見ると、日付の取り違えを見落とすおそれがあります。送信後は、回答期限に間に合うように生産部門への確認を通常の業務管理に登録します。下書きの作成と、納期回答の完了を別々に管理するのがポイントです。

受発注情報は項目ごとに照合する

注文書やメールから情報を整理する場合は、読み取った内容の確認表を作ると扱いやすくなります。画像やPDFの読み取り結果には誤りが含まれるため、AIの表をそのまま基幹システムへ登録する前提にはしません。

確認項目 間違いの例 確認方法
品番 末尾の英字や枝番が抜ける 原文と商品マスターを照合する
数量と単位 10箱を10個として扱う 数量と単位を別々に記録する
日付 希望納期と回答期限が混ざる 日付の意味も同じ欄に残す
変更履歴 古い注文条件が残る 最新の変更依頼と照合する
備考 分納不可などの条件が抜ける 数字以外の条件も確認する

不明な文字は推測せず「要確認」と出すように指定します。正しく読めた項目が多くても、品番や数量に未確認箇所が一つ残るなら登録を止める、という運用にすると判断がそろいます。図面や注文書を外部サービスへ渡せない場合は、架空の資料で試し、実資料での利用は承認後に進めます。

現場に負担をかけずに試す順番

最初は一人の営業担当と、その出力を確認できる担当者で試します。普段扱う問い合わせのうち、公開情報で答えられるもの、社内確認が必要なもの、回答を保留するものを選び、それぞれで期待する対応を書いておきます。

次に、同じ指示文で複数の例を試し、どの種類で修正が増えるかを記録します。公開情報への案内は使えても、特注品の条件調整では修正が多いなら、利用範囲を公開情報への案内に限定できます。うまく使える範囲を具体的に決めると、現場の担当者も迷いにくくなります。

試行の最後には、入力準備、出力の修正、確認の時間を合計します。短縮できた時間と、確認者の負担を合わせて見ることが継続の判断材料です。評価表の作り方は、AI導入の効果測定を参考にしてください。

まとめ

製造業のAI活用は、生産設備を変えずに試せる事務部門と営業部門から始めると取り組みやすくなります。メールや書類の下書き、見積の説明文や提案書、問い合わせの回答案、社内の資料探しなどが、生成AIで手間を減らしやすい作業です。図面や取引先の情報は、契約上の扱いを確認してから入力を判断します。

e-Grantsは、愛知県一宮市のAIカンパニーです。名古屋・愛知の企業に向けて、業務の洗い出しからツールの選定、小さく試す試験導入、社内ルールづくりまでを支援するAI導入コンサルティングを提供しています。事務・営業部門のどの作業から始めるかを相談したい場合は、30分の無料AI活用診断をご利用ください。

益田 尚紀

この記事を書いた人

益田 尚紀株式会社e-Grants 代表取締役

株式会社e-Grants代表取締役。愛知県一宮市を拠点に、企業のAI導入支援・AI受託開発・社内AI基盤の構築と、工務店のWeb集客支援に取り組んでいます。現場で使えるAI活用とデジタル集客を、むずかしい言葉をほどいて発信します。

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