
この記事のポイント
- AI導入は、ツール選びより先に「どの作業を減らしたいか」を決める。
- 最初は対象の業務を絞って試し、効果を確かめてから広げる。
- 4週間の進行例を参考に、試す業務・確認者・終了後の判断日を具体的に決める。
「AIを使ってみたいが、何から始めればよいか分からない」。AI導入を考え始めたとき、最初に迷いやすいのがこの点です。
この記事では、AIに詳しい担当者がいない中小企業でも進められるように、AI導入の進め方を4つのステップに分けて紹介します。
ステップ 1: 減らしたい 作業を 一つ 決める
最初に決めるのは、使うAIの種類ではありません。「どの作業の手間を減らしたいか」です。
たとえば、次のような作業はAIに任せやすい例です。
- 社内の資料や過去の書類から、必要な情報を探す
- 提案書やメールの下書きを作る
- よくある問い合わせに、一次回答を返す
- 広告やSNSに載せる文章や画像の案を作る
候補がいくつもある場合は、「毎日発生する」「時間がかかる」「担当者が限られている」の3つに当てはまる作業から選ぶと、効果を実感しやすくなります。
作業を選んだら、今のやり方を簡単に書き出しておきます。誰が、どの資料を見て、どれくらいの時間をかけているか。この記録があると、AIを使った後との比較ができます。書き出す内容は、箇条書きのメモ程度で十分です。
この段階では、AIで何ができるかを詳しく知らなくても問題ありません。困っている作業をはっきりさせることが、相談先と話すときにも役立ちます。
ステップ 2: 既製 ツールで 足りるか、 開発が 必要かを 見極める
ChatGPTなどの既製ツールで十分な作業もあれば、社内の資料や業務システムとつなぐために開発が必要な作業もあります。
| 進め方 | 向いている場合 |
|---|---|
| 既製のAIツールを使う | 文章作成や要約など、社内の情報を使わない作業 |
| 社内の情報とつなぐ | 社内の資料やデータを参照して回答させたい作業 |
| 専用のAIアプリを開発する | 業務の流れに合わせた画面や機能が必要な作業 |
この段階で、費用と期間の目安も確認しておきましょう。開発費だけでなく、AIの利用料や保守の費用も含めて考えることが大切です。
既製ツールで始める場合も、会社として使うアカウントを用意するのか、社員が個人で契約するのかで、管理のしやすさが変わります。入力した情報がどのように扱われるかは、ツールの利用規約や設定で確認できます。機能や料金は変わることがあるため、導入するときは各社の公式情報を確認してください。
開発が必要かどうか迷う場合は、まず既製ツールで試し、足りない点を洗い出してから判断する方法もあります。足りない点が具体的になるほど、開発する範囲を小さく絞れます。
ステップ 3: 小さく 試して、 効果を 確かめる
いきなり全社で使い始めるのではなく、対象の業務と利用者を絞って試します。

試すときは、事前に「作業時間がどれだけ減ったか」「回答の品質は使えるレベルか」など、確認する項目を決めておきます。効果が確認できてから利用範囲を広げると、社内の理解も得やすくなります。
試験導入の期間は、業務の頻度に合わせて決めます。毎日発生する作業なら短い期間でも傾向がつかめます。月に数回しか発生しない作業では、数回分の結果を見てから判断しましょう。
試した結果、期待したほど効果が出ないこともあります。その場合も、どこで手間が残ったのかが分かれば、対象の作業や使い方を変えて次の試行につなげられます。うまくいかなかった理由を記録しておくことが、次の判断材料になります。
ステップ 4: 社内 ルールを 決めて、 定着させる
AIを使い続けるには、次のようなルールも欠かせません。
- AIに入力してよい情報と、入力してはいけない情報
- 誰が、どの範囲の情報にアクセスできるか
- AIが作った内容を、誰がどのように確認するか
ルールを決めたうえで、使い方の手順を社内で共有します。一部の社員だけが使う状態から、チームの標準の進め方に変えていくことが、AI導入のゴールです。
定着させるには、使い方の相談先を社内に決めておくと効果的です。困ったときに聞ける人がいると、使うのをやめてしまう社員が減ります。また、利用状況を定期的に振り返り、使われていない作業があれば理由を確認します。ルールや手順は一度決めて終わりにせず、使いながら見直していきましょう。
つまずきやすい 点と 対策
AI導入の途中で止まってしまう理由には、いくつかの共通点があります。一つは、対象の作業を広く取りすぎることです。最初から多くの業務をまとめて変えようとすると、効果の確認も社内の調整も難しくなります。まずは一つの作業で成果を確かめてから広げるほうが、結果として早く進みます。
もう一つは、担当者が一人で抱えてしまうことです。AIに詳しい社員がいても、通常の業務と並行して進めるのは負担が大きくなります。経営者が目的と優先順位を示し、担当者が判断に迷ったときに相談できる体制をつくっておきましょう。
最後に、AIの出力をそのまま使ってしまうことです。AIが作った文章や回答には、誤りが含まれることがあります。誰が確認してから使うのかを、業務の手順に組み込んでおくと安心です。
営業 メールを 題材にした 4 週間の 導入例
営業担当が3人いる会社で、問い合わせへの返信に時間がかかっていると仮定します。以下は進め方を説明する想定例で、特定の企業の実績ではありません。対象は「公開済みの商品情報を使う返信の下書き」に限定し、見積金額の決定やメール送信は担当者が行います。
| 時期 | 進めること | その週に残すもの |
|---|---|---|
| 1週目 | 最近の返信を見直し、よくある質問を選ぶ | 質問の種類と従来の作業時間 |
| 2週目 | 架空の問い合わせで下書きを作る | 指示文、確認項目、使えなかった出力 |
| 3週目 | 承認済みの情報だけで実務に使う | 準備・修正・確認を含む作業時間 |
| 4週目 | 続行、見直し、見送りを判断する | 判断理由と次の対象範囲 |
1週目には、文章を書く時間と、在庫や納期を調べる時間を分けて確認します。調査が大半を占める業務なら、文章の生成だけで大幅な短縮は期待できません。その場合は、回答に使う商品情報を探しやすくする作業も候補になります。
2週目は、回答できる質問だけでなく、資料に答えがない質問も試します。「カタログにない特注品を来週納品できますか」と聞かれたときに、AIが勝手に引き受ける文面を作らないかを確認するためです。「資料にない条件は未確認と書く」という指示を入れ、担当者への引き継ぎまで確かめます。
3週目に使う手順は、問い合わせから不要な情報を除く、指定の資料と指示文を渡す、下書きを原文と照合する、担当者が送信する、という順番です。各工程を分けることで、AIの出力が速くても確認に時間がかかるケースを見つけられます。
社長、 現場、 外部 支援の 役割を 決める
中小企業では、専任のAI担当を置けないこともあります。その場合は役職を増やすより、判断する場面ごとに担当を決めると進めやすくなります。経営者は試す目的と予算の上限を決め、現場担当は使う資料と出力の良し悪しを判断します。外部に依頼する場合は、設定、手順書、研修など、どの作業を任せるかを書き分けます。

現場担当が通常業務の合間に試すだけでは、急ぎの仕事に押されがちです。上長と相談して試行と振り返りの時間を確保し、相談事項は一つの一覧に残します。回答を待っている間に進めてよい作業も決めておくと、担当者の不在で全体が止まりにくくなります。
相談前に 用意する 資料と、まだ 用意しなくてよい 資料
初回の相談には、現在の作業手順、匿名化した入力例、求める出力の見本があると役立ちます。「効率化したい」という要望に加え、「この問い合わせを、この書式の回答にしたい」と見せれば、必要な支援を具体的に話せます。実データを共有できないときは、内容を架空のものに置き換えた見本でも構いません。
最初から詳細なシステム仕様書を作る必要はありません。未定の項目は未定のまま伝え、資料の選別や業務の整理も相談に含めるかを確認します。準備状況を確かめる際は、AI導入前の社内チェックリストを使うと、目的・体制・情報・予算の抜けを確認できます。
導入を 急がず、 準備から 始める 場合
対象業務の担当者が決まらない、使う資料の版が分からない、出力の確認者を置けない場合は、先に業務と資料を整理します。AIの契約を増やしても、その不足は解消しません。直近の作業を一件たどり、どの資料を正式な版として使い、誰が判断しているかを確認してください。資料の置き場所や手順が整えば、AIを使う範囲も決めやすくなります。
相談先を 選ぶときの 確認 ポイント
AI導入を外部に相談する場合は、次の点を確認しておくと安心です。
- AIの知識がなくても分かる言葉で説明してくれるか
- 計画だけでなく、開発や社内への定着まで任せられるか
- 特定のツールありきではなく、目的に合うものを選んでくれるか
- 社内の情報の扱いについて、ルールづくりまで支援してくれるか
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