
この記事のポイント
- 求人票や日程調整の文面は、人が決めた条件だけをAIに渡して下書きさせる。
- 応募者の氏名・連絡先・応募書類はAIに入力せず、送る直前に人が差し込む。
- 書類の評価や合否はAIに任せず、判断の理由を人が自分の言葉で残す。
中小企業では、総務や経理の担当者が人事・採用の事務を兼ねていることがよくあります。求人票を書き、応募者と面接の日程をやり取りし、社員から休暇や手当の質問を受けるなど、どれも文章を書く作業が多く、生成AIで下書きを作れそうに見えます。
この記事では、人事・採用の事務のうち、AIに下書きを任せやすい作業と、人が判断を残す作業を分けて説明します。結論としては、条件や日時は人が決め、AIには文面の下書きと規程の検索を任せる形が始めやすい使い方です。求人票、面接日程の調整文、社内規程の問い合わせの入力例を示し、応募者の個人情報の扱いと、選考の判断をAIに任せない理由も整理します。
AIに 任せやすい 作業と 人が 決める 作業
人事・採用の事務では、文章の形を整える作業はAIに任せやすく、条件や人の評価を決める作業は人が担当します。代表的な作業を分けると、次の表のようになります。

| 作業 | AIに頼む部分 | 人が決める部分 |
|---|---|---|
| 求人票 | 仕事内容の説明文、読みやすい構成 | 給与・勤務時間などの条件、掲載の可否 |
| 面接日程の連絡 | 案内や変更の連絡文のひな形 | 候補日時、面接官、送信 |
| 規程の問い合わせ | 該当する条文の検索と説明の下書き | 個別の事情がある質問への回答 |
| 選考 | 面接で聞く質問の案 | 書類の評価、合否、条件の提示 |
表の右の列は、間違えたときの影響が大きく、応募者や社員に対して会社が責任を持つ内容です。AIの下書きを使う場合も、右の列の内容は人が確かめてから外に出します。どの作業から試すかを決める手順は、AIに任せる業務の選び方で説明しています。
求人票の 下書き
求人票をAIに書かせるときは、条件をAIに考えさせないようにします。給与、勤務時間、休日、勤務地、試用期間などは、人が社内の決定事項を確認して用意します。AIには、その条件をもとに仕事内容の説明を分かりやすく書く作業を頼みます。入力例を示します。
次の条件で、求人サイトに載せる「仕事内容」の説明文を書いてください。
・職種:営業事務
・主な仕事:受注データの入力、見積書の作成補助、電話とメールの一次対応
・使う道具:販売管理システム、表計算ソフト
・配属先:営業部
条件
・ここに書いていない条件(給与、福利厚生、残業時間など)は書かない
・性別や年齢を限定する表現を使わない
・400字以内
出力を受け取ったら、入力した条件と違う内容が書かれていないかを一文ずつ確かめます。AIは「未経験歓迎」「残業少なめ」のような、求人でよく見る言葉を補うことがあります。事実と違う言葉が入ると、応募者との間で認識のずれが起きます。
求人の際に示す労働条件や、性別・年齢の限定には、法律上のルールがあります。明示が必要な項目は改正されることもあるため、厚生労働省の公式の情報で確認してください。判断に迷う表現は、社会保険労務士などの専門家に相談します。
面接 日程の 調整文
面接日程の連絡では、案内、候補日の提示、確定、変更、辞退への返信と、似た文面を何度も書きます。AIには場面ごとのひな形を一度作ってもらい、社内で確認した文面を使い回します。
ひな形には応募者の名前や日時を入れず、差し込む場所を記号で示します。
{応募者名} 様
この度は営業事務の求人にご応募いただき、ありがとうございます。
一次面接の日程について、次の候補からご都合のよい日時をお知らせください。
{候補日時1}
{候補日時2}
{候補日時3}
会場:{会場名と住所}
所要時間:{所要時間}
ご都合が合わない場合は、その旨をご返信ください。別の日程をご案内します。
候補日時は、面接官の予定表を見て人が決めます。AIに予定表を読ませて候補を出させる仕組みも作れますが、最初はひな形の作成だけに使います。送信前には、日付と曜日の組み合わせを人が確かめてください。AIの下書きでは、日付と曜日が合わない誤りが起きることがあります。
社内 規程の 問い合わせ 対応
人事の担当者には、「有給休暇は半日単位で取れるか」「通勤手当の申請はいつまでか」といった質問が繰り返し届きます。就業規則や各種規程をAIに参照させ、該当する条文と説明の下書きを作らせると、担当者は条文を探す時間を減らせます。
この使い方では、回答に条文の名前と番号を必ず示させます。担当者は示された条文を開き、説明が条文と合っているかを確かめてから返信します。社内の資料を検索して答える仕組みの作り方は、社内マニュアルや規程の検索をAIで改善する方法で説明しています。
病気、家族の介護、育児、ハラスメントの相談のように、個別の事情が関わる質問はAIの回答対象から外します。こうした質問は内容を他の人に見せない配慮が必要なため、担当者が直接対応します。
応募者と 社員の 個人 情報の 扱い
採用の事務では、氏名、住所、連絡先、学歴、職歴など多くの個人情報を扱います。履歴書や職務経歴書をそのままAIツールに入力する運用は避けます。

AIに渡すのは、ひな形や一般的な質問のように、個人を特定できない内容に絞ります。応募者の名前や日時は、AIが作ったひな形に人が差し込んで送ります。社員からの問い合わせも質問の内容だけを渡し、氏名や所属は入力しません。
会社として使うツールは、入力した内容が学習に使われない設定や契約になっているかを確認します。個人情報の扱いの基本は個人情報保護委員会の公式サイトで確認できます。社内の情報を入力してよいものと入力しないものに分ける方法は、社内の情報をAIに入力する前に確認することで説明しています。
選考の 判断を AIに 任せない 理由
書類の点数づけや合否の判断をAIに任せることは勧めません。理由は三つあります。
一つ目は、判断の根拠を説明できなくなることです。AIが出した評価をもとに不採用にした場合、会社は何を理由に判断したのかを、応募者や社内に説明しにくくなります。
二つ目は、評価が偏るおそれがあることです。AIの出力は、学習したデータや指示文の書き方に影響されます。経歴の書き方や文章の癖など、仕事の能力と関係のない点で差がつく可能性があります。
三つ目は、応募者の信頼に関わることです。自分の応募書類がAIに評価されていると知った応募者が、不安を感じる場合があります。
AIを選考に使うなら、職種の要件から面接で聞く質問の案を作る、面接官が書いたメモの書式を整える、といった補助にとどめます。評価と合否は、面接官が自分の言葉で理由を残します。
想定例 総務 担当者が 一か 月の 採用 事務に 使う
ここからは想定例です。総務と人事を兼ねる担当者が、営業事務を一名採用するための一か月の事務にAIを使う場面を考えます。
最初に、社内で決めた条件の一覧を用意し、求人票の仕事内容の説明文を作ります。出力は条件の一覧と並べて読み、書いていない条件が入っていないかを確かめます。次に、面接の案内、日程の確定、日程の変更、不採用の連絡の四つのひな形を作り、上長に確認してもらってから保存します。
応募が届いたら、担当者はひな形に名前と候補日時を差し込んで送ります。面接の前には、職種の要件をAIに渡して質問の案を出してもらい、面接官が使う質問を選びます。並行して届く社員からの規程の問い合わせには、規程を参照するAIの下書きを使い、条文を確認してから返信します。この一か月の間、応募書類そのものはAIに入力しません。
まとめ
人事・採用の事務では、求人票の説明文、日程調整のひな形、規程の問い合わせの下書きにAIを使えます。条件や日時は人が決めて入力し、応募者や社員の個人情報はAIに渡さない運用にします。書類の評価や合否はAIに任せず、判断の理由を人が残してください。
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