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AIに任せる業務の選び方:業務の棚卸しの進め方と優先順位のつけ方

AIに任せる業務を選ぶための棚卸し手順を解説。営業部門の記入例、作業時間・確認工数・情報の制約を比べる表、担当者への聞き取り項目、最初の試行対象を決める方法を紹介します。

この記事のポイント

  • 業務の棚卸しは、部署ごとの作業を手順の単位まで分けて書き出す。
  • 頻度・時間・ルールの明確さを記録し、AIに向く作業を見分ける。
  • 見込める短縮時間と確認工数を分けて書き、入力資料と確認者がそろう作業から試す。

AIを業務に取り入れようとすると、「何に使えばよいか」で手が止まることがあります。思いついた用途から試してみても、効果がはっきりしないまま終わってしまうことがあるでしょう。

AIに任せる業務を選ぶには、まず今ある業務を洗い出して整理する必要があります。この作業が、この記事でいう業務の棚卸しです。

ここでは、業務の棚卸しの進め方を4つの手順に分けて説明します。あわせて、AIに向く作業の見分け方と、最初に取り組む業務の選び方も紹介しましょう。

手順1:部署ごとに作業を書き出す

最初に、対象とする部署の作業を書き出します。全社を一度に見ようとすると時間がかかるため、まずは一つか二つの部署に絞るとよいでしょう。

書き出すときは、各部署の担当者に「一週間にどんな作業をしているか」を挙げてもらいます。管理職だけで書き出すと、日々の細かい作業が抜けやすくなるからです。実際に作業している人に聞くことで、表に出にくい手間も拾えます。

この段階では、AIに向くかどうかは考えなくてかまいません。「メールの返信」「日報の作成」「見積書の作成」「会議の議事録」など、思いつく作業に名前をつけて並べるだけで十分です。

書き出した作業には、担当者名もあわせて記録しておくと便利です。特定の人しか進め方を知らない作業は、AIを使うかどうかにかかわらず、手順を言葉にしておく価値があります。

書き出す方法は、紙でも表計算ソフトでも問題ありません。後で並べ替えたり、項目を追加したりすることを考えると、表計算ソフトのほうが扱いやすいでしょう。

手順2:作業を手順の単位まで分ける

次に、書き出した作業を手順の単位まで分けます。「見積書の作成」という一つの作業も、分けてみると複数の手順から成り立っているものです。

見積書の作成という一つの作業を手順に分けた図。過去の見積書を探す、説明文を書くといった手順はAIに任せやすい側に、単価の確認や最終的な金額の判断は人が担う側に分かれ、作業の一部だけをAIに任せる選択肢が見えることを示している。
作業を手順に分けると、一部だけをAIに任せる選択肢が見えてきます。

たとえば見積書の場合、「依頼内容を読む」「過去の見積書を探す」「単価を確認する」「説明文を書く」「上長に確認を依頼する」のように分けられます。このうち、過去の資料を探す作業や説明文の下書きは、AIに任せやすい部分です。単価の確認や最終的な金額の判断は、人が担うのが自然でしょう。

作業をひとまとまりのまま見ると、「この作業はAIには任せられない」と判断しがちです。手順に分ければ、一部だけをAIに任せるという選択肢が見えてきます。

手順3:頻度と時間、ルールの明確さを記録する

手順に分けたら、それぞれについて3つの点を記録します。どのくらいの頻度で発生するか、1回あたりにどのくらいの時間がかかるか、進め方やルールが決まっているか、の3点です。

頻度と時間は、AIに任せたときの効果の大きさを見積もる手がかりになります。毎日発生して時間のかかる作業ほど、手間が減ったときの差が分かりやすくなるはずです。

ルールの明確さも大切な観点です。「この形式で、この項目を入れて書く」と決まっている作業は、AIへの指示も書きやすく、結果の確認もしやすくなります。反対に、担当者の経験や勘で進めている作業は、まずルールを言葉にするところから始める必要があるでしょう。

正確な時間を測る必要はありません。担当者の感覚でよいので、「1回あたり30分くらい」のような目安を残しておきます。この目安は、後でAI導入の効果を比べるときの材料になるでしょう。

手順4:AIに向く作業を見分ける

記録した内容をもとに、AIに向く作業を見分けます。生成AIが扱いやすいのは、文章の下書き、要約、分類、言い換え、情報の検索のような作業です。

一方で、結果の誤りが大きな損失につながる作業や、法律や契約に関わる判断は慎重に考えます。相手の気持ちへの配慮が欠かせない対応も同様です。こうした作業でもAIを使える場面はありますが、AIは下書きや下調べに使い、判断は人が行う形が前提になります。

生成AIは、もっともらしいが事実と異なる内容を出力することがあります。そのため、出力を誰が確認するかを決められる作業から始めると安心です。

判断に迷う作業は、実際に少し試してみるのも一つの方法です。過去の資料を一つ選んでAIに下書きを作らせ、担当者に使えそうかを聞いてみます。机の上で考えるより、結果を見たほうが判断しやすいことも多いでしょう。ただし、試すときも入力してよい情報のルールは守ってください。試行には、会社が承認した環境と入力を許可した資料を使います。固有名詞を伏せても機密性が残る情報は、入力してよいと確認できるまで使わないでください。

最初に取り組む業務の選び方

候補が出そろったら、最初に取り組む業務を一つか二つ選びます。選ぶ基準を表にまとめると、次のようになります。

観点 最初の対象に向いている作業
頻度 毎日または毎週、くり返し発生する
時間 1回あたりの作業に一定の時間がかかっている
ルール 進め方や書式がある程度決まっている
影響 誤りがあっても、確認の段階で直せる
協力 担当者が試すことに前向きである

最後の「協力」は見落とされやすい観点です。担当者が新しいやり方に乗り気でないと、試した結果が正しく評価されないことがあります。最初の対象は、担当者と話し合って決めるとよいでしょう。

選んだ業務は、対象と期間を絞って試すのがおすすめです。試験導入の進め方は、AI導入は小さく試す:試験導入で確認することで紹介しています。

営業部門の棚卸し表を作る例

営業部門で三つの作業を比較する想定例を示します。数字は記入方法を説明するための仮定で、一般的な相場や効果を示すものではありません。実際には、担当者の記録に置き換えてください。

作業 月の回数 現在の1回の時間 使う資料 人が残す作業
商談メモの整理 20回 20分 入力を認めた面談メモ 決定事項、担当、期限の確認
商品紹介メール 30回 10分 公開済みカタログ 取引条件と宛先の確認
見積金額の決定 10回 30分 原価、契約条件 金額判断と承認

月の合計時間だけなら、商談メモは400分、商品紹介メールは300分、見積金額の決定は300分です。ただし、この数字がそのまま削減時間になるわけではありません。入力の準備や出力の確認も残るため、次に「AIを使ったときに人が行う工程」を書き足します。

たとえば商品紹介メールで、準備と確認に合計7分かかると仮定すれば、短縮の見込みは1回3分、月90分です。商談メモの確認に時間がかかるなら、最初はメールのほうが試しやすいかもしれません。こうして、作業の大きさと取り組みやすさを分けて判断します。

点数を付ける前に、試せる条件がそろうか確認する

優先順位を点数だけで決めると、短縮時間の大きい難しい作業が上位に来ることがあります。最初は「入力できる資料がある」「正しい結果を判断できる人がいる」「誤りを外に出す前に止められる」の三つを確認してください。

候補の作業について、入力できる資料があるか、正しい結果を判断できる人がいるか、誤りを外に出す前に止められるかの三つを確認する図。三つがそろえばすぐに試し、そろわない作業は対象から外して準備することを記録する。
点数の前に、資料・判断する人・誤りを止める仕組みの三つを確かめます。

三つがそろわない作業は、すぐにAIで試す対象から外し、準備することを記録します。たとえば資料の利用許可が未確認なら確認先を、正しい回答が整理されていないなら資料の整理担当を決めます。準備待ちを明示すれば、候補を忘れることなく、先に試せる作業を進められます。

同じ部署でも、ベテランにとっては簡単な作業が、新人には負担になっている場合があります。短縮時間だけでなく、問い合わせが特定の人に集中していないかも見てください。ただし、新人がAIの誤りを見抜けない場合は、確認者の時間を別に見積もる必要があります。

担当者への聞き取りは、直近の仕事を一件たどる

「困っていることは何ですか」と聞くだけでは、印象に残った大きな仕事しか挙がらないことがあります。直近で処理した一件を選び、最初に開いた資料、探した情報、判断に迷った点、最後に提出したものを順に聞くと、細かな手間が見えます。

作業中に別の社員へ質問したなら、何を聞いたのかも残します。回答が毎回同じなら、手順書を整えるだけで改善する可能性があります。資料を探す時間が長ければ、まず保管先やファイル名を見直す方法も考えられます。

聞き取りの最後に、担当者自身に「この一部が減るなら試したい」と思う作業を選んでもらいます。その作業の入力例と完成見本を一つずつそろえ、確認者と試行日を決めれば、棚卸しを実行につなげられます。試した後は、予想と実測の差を元の表に追記し、次の優先順位を更新してください。

まとめ

業務の棚卸しは、部署ごとに作業を書き出し、手順の単位まで分け、頻度・時間・ルールの明確さを記録するという流れで進めます。そのうえでAIに向く作業を見分け、効果が見えやすく、誤りを確認の段階で直せる作業から始めるのが基本です。

棚卸しの結果は、AI導入だけでなく業務の見直しにも役立ちます。作業を書き出す中で、AIを使わなくても省ける手順が見つかることもあるからです。

e-Grantsは、愛知県一宮市のAIカンパニーとして、名古屋・愛知の企業のAI導入を支援しています。業務の洗い出しからツールの選定、小さく試す試験導入までを一緒に進めるAI導入コンサルティングをご用意しました。どの業務から始めるか迷っている段階なら、30分の無料AI活用診断をご利用ください。

益田 尚紀

この記事を書いた人

益田 尚紀株式会社e-Grants 代表取締役

株式会社e-Grants代表取締役。愛知県一宮市を拠点に、企業のAI導入支援・AI受託開発・社内AI基盤の構築と、工務店のWeb集客支援に取り組んでいます。現場で使えるAI活用とデジタル集客を、むずかしい言葉をほどいて発信します。

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